- Season 1 Episode #5 -
ある夜、トーチウッドの「ハブ」でジャックは古い兵員輸送用の貨車の中で口から薔薇の花びらを撒き散らして死んでいく兵士たちを夢にみた。悪夢から目覚めた彼のデスクの上に1枚の薔薇の花びらが。遅くまで残っていたイアントは彼に異常気象の起こっている地域があると報告する。
その翌日。小学生のジャスミン・ピアスは不審な男につけまわされる。彼は母親に頼まれたといってジャスミンを車に連れ込もうとするが、そのとき突風とともにどこからともなく声が聞こえてきて男を釘付けにし、ジャスミンを救った。
一方、ジャックはグウェンを伴って昔の知人のエステルを訪問した。その老婦人は「妖精は空想か?」という講演で、「コティングリー妖精事件」で撮影された写真と、自分が最近撮影した妖精の写真とを比較し、妖精は実在すると解説する。彼女は妖精を友好的な良い存在だと語るが、ジャックはそれに否定的だった。妖精はこの世の始まりから存在する時間を越えた生き物で、エイリアンと違って人間の世界に昔から入り込んでおり、ときに危険になりうるのだった。二人はさらに写真を見るためエステルの自宅を訪れる。
ジャスミンを誘拐しようとした男、グッドソンはその後もこの世ならぬ声に脅かされ、カーディフの市場に転がりこむが、やがて口から薔薇の花びらを撒き散らし始める。彼は警察に保護を求める。
エステルの家で、グウェンはジャックらしい人物の古い写真を見つける。それについてたずねると、二人はそれはジャックの父親の写真で、第二次大戦中にエステルと交友があったのだと答えた。帰り際に、ジャックはエステルにもしまた妖精を見ることがあったら電話してくれと頼む。
グッドソンは小児性愛者だと告白して独房にいれてくれるよう警官に頼む。だが翌朝彼は独房で死体となって見つかった。怪奇現象に呼び出されたトーチウッドのチームが死体を調べると、彼ののどには薔薇の花びらが詰まっていた。ジャックは妖精が「選ばれし子」を守るためにグッドソンを殺したのだと気づく。
その夜遅く、エステルは怪しい人影をみてジャックに電話する。しかしチームが到着する前に彼女は豪雨の中で溺死してしまった。その家の周囲以外は晴れていたにもかかわらず・・・。彼女の死を悼むジャックに、グウェンはエステルを愛していたのはジャックの父ではなく彼自身だったのだと気づく。
「ハブ」に戻ったジャックは、問われるままに薔薇の花びらをいつ見たのかをグウェンに語る。1909年にラホール(現在のパキスタンの北東部)で軍用列車で移動していたとき、トンネルを通っている間に彼が指揮する15人の兵士たちが薔薇の花びらで窒息死した。その一週間前、兵士たちは酔って一人の少女を轢いてしまったのだが、それが「選ばれし子」だったのだ。妖精とは過去数千年にわたって集められた子供たちで、次の「選ばれし子」を連れて行くために人間世界に現れるのだった。
翌日、異常気象を検知したチームはジャスミンの通う学校に向かい、嵐になにも影響を受けなかったのがジャスミンという少女だと知る。一方、ジャスミンの母のリンとボーイフレンドのロイは裏庭でバーベキュー・パーティを開いていた。ジャスミンは彼女が森に入り込まないようにロイが柵を作ったのを見つける。怒って噛み付いたジャスミンをロイは殴ってしまう。裏庭でロイが客たちと談笑していると、突風とともに姿を現した妖精たちが襲いかかった。ちょうど到着したトーチウッドのチームは招待客を退避させたがロイだけは助けられず、ジャスミンと妖精は森へ逃げ込んでしまった。
彼らに追いついたジャックは妖精たちにジャスミンを連れ去るなと命ずるが、妖精たちはもし彼女が自分たちと来なければ多くの生物が死ぬことになるといって拒絶する。ジャスミンもまた、人間の世界よりもこの古い森に残りたがっていた。選択の余地がないことを悟ったジャックはジャスミンを傷つけないことを条件に彼女を行かせる。娘が妖精に包まれて消えていくのを目撃したリンはジャックに怒りをぶつけるが、彼は謝罪することしかできなかった。
「ハブ」に戻ったグウェンが事件の写真を整理していると、1917年のコティングリー事件の写真が会議室のモニターに映し出された。グウェンは妖精の顔がはっきりわかるまで写真を拡大する。そこに写っている妖精はジャスミンだった。グウェンの耳に遠い歌が聞こえてくる。
"Come away, O human child!/To the waters and the wild/With a faery, hand in hand,/For the world's more full of weeping than you can understand."
(『こちらにおいで!おお、人の子よ!いっしょに行こう、森へ、湖へ。妖精と手に手を取って。この世にはお前の知らぬ、悲しいことがあふれている』
イェイツ『盗まれた子供』講談社学術文庫文庫「ケルト妖精学」より)